3月の御教え
 














身を捨てて浮かむ瀬もある世の中に


舟のみおしむ身こそかなしき


(御歌一八〇号)




















《解説》









 先月号の本稿で学ばせていただいた「追剥(おいはぎ)にお約束の金を」、「同じ金を二度お払い」、「横領の冤罪(えんざい)を甘んじてお受けになる」の三つの「教祖様の御逸話(ごいつわ)」に共通するのは、天命(てんめい)直授(じきじゅ)という天地と一体のお悟りによって得られた教祖宗忠神の揺るぎない御心に立脚した、徹底したしなやかさと自然体、そして究極の()かし上手の尊い御手振りでした。


私たちが同じことをそのまま実践させていただくにはあまりにも崇高すぎる教祖様の御逸話ですが、自分が身を捨てる(損をする)ことで、結果的に救われる(良い結果を得る)ことがあるのが世の中なのに、あまりにも身を守り形(舟)ばかりを惜しむ人の多いことを戒められた今月の御教えは、功利主義と自己主張が横行する時代に生きる私たち現代人こそが、心して学び修めなければならないご忠告です。


「自分が正しいと思う人が、一歩下がれば争いは起こらない」という昭和天皇陛下の御言葉を、私たちは教主様から教えていただいています。個人のレベルから国家間、また民族間や宗教間に至るまで、紛争による衝突を避ける “最善の高等戦術”が、この「一歩下がる」であり「身を捨てる」態度なのです。これは、得てして「押し切られて下がる」とか「身を捨てさせられる」ことと同じだと勘違いされ(やす)いのですが、前者と後者は明らかに異なります。余力をもって自らの意志で譲ることの強さは、真剣に生きている人なら誰もが理解できる真理です。


ただ、誰でもいつでも簡単に用いられないから“最善の高等戦術”なのであって、そこを目指すのが私たちの修行です。「舟」、すなわち形式や主義主張やプライドや損得のみに執着しがちな我欲を離れて、「身を捨てて」一切を天に任せる「離我任天」という道の奥義を目指して、ともにつとめてまいりたいものです。教主様は、「()をして()を取りませんか」と御教え下さっています。